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歯を抜かない治療 非抜歯矯正治療
歯を抜かない(非抜歯)矯正治療の流れについて歯科矯正治療というと、「歯を抜いて治療する」とばかり思われていませんか?確かに、多くの矯正医が、およそ70%の患者様の第一小臼歯(前から数えて4番目で、犬歯のすぐ後ろの歯)4本を抜歯して治療を行っています。しかしその一方、『歯を抜かない(非抜歯)矯正治療』という言葉を、皆さんもきっと一度は耳にされたことがあると思います。では、どのような場合に歯を抜かずに済むのでしょうか?
歯並びは、歯の大きさとあご(顎)の骨の大きさとのバランスで決まるのですが、顎の骨をベンチに、歯を人にたとえた場合、歯並びの不正は6人用ベンチに7~8人が座ろうとして無理をしている状態です。ベンチがもっと大きければ全員が座れるのですが、その様なことは可能なのでしょうか?成長期のお子様の場合には、歯を抜かないでも、全ての歯が並ぶようにスペースを作ることが可能である場合が多くあります。
当院では、混合歯列期(小学生高学年)から治療を開始した場合、80%以上の方が非抜歯で矯正治療を終了しております。
そのためには、顎の成長を考慮しながら「奥歯に隙間を作る装置」、「顎を大きくする装置」等を使用して、上下の歯列の縦(後方)、及び横への拡大という3次元的な改善を行います。では、具体的な治療の流れについて見てみましょう。
ほてい矯正歯科クリニック
非抜歯矯正治療は次の3つのステップで進めてゆきます。
1. 顎(歯列)を拡大し全ての歯が並ぶためのスペースを作る治療(1年~2年)
2. 確保されたスペースを利用して歯並びや咬み合わせを整える治療-エッジワイズ治療(~2.5年)
3. 治療後のケア(~2年)
ここでは1.について詳しく説明いたします。
2.の治療はエッジワイズという装置により行います。
【エッジワイズ治療を受けられる患者さまに・・】をご参照下さい。
3.歯を動かし終わった後、装置をはずしてそのままにした場合に、歯の位置がいくぶん元に戻ってしまうことがあります。それを防ぐためには治療後のケアがとても大切になります。装置をはずした当日に必ず、治した歯並びやかみ合わせを維持するための装置(リテーナー・保定装置)を装着します。
顎を拡大し歯が並ぶためのスペースを作る治療には、拡大する方向により主に2つの方法があります。
歯列を縦方向(後方)へ拡大する治療
歯列を横方向へ拡大する治療
歯を削ってスペースを作る治療
それぞれの方法について具体的に説明いたします。
(A)歯列を縦方向(後方)へ拡大する治療(1年~2年)
歯列を縦方向へ拡大するとは、奥歯を後ろへ移動させることを意味します。前歯を前方へ動かしても縦方向の拡大になりますが、多くの場合口元が突出してしまいますので、あまり行いません。
この固定式装置(写真1)を使用しますと、バネの力により奥歯を後方へ移動することができます。後方移動によってできたスペースは、出ていた前歯を後ろへ下げたり、凸凹の歯並びを平らにしたりするのに使われます。
顎外固定装置(写真2)と呼ばれる取り外し可能な器具を、夜間の就寝の際に装着していただくよう、お願いすることがあります。
写真1の装置の補助として使用した場合に、より効率的に奥歯を後ろへ移動させることが可能になります(写真1の装置だけや、顎外固定装置だけで奥歯を後方へ移動させる場合もあります)。
(B)歯列を横方向へ拡大する治療(1年~2年)
写真3の装置(急速拡大装置)を使用しますと、真ん中にある拡大ネジの作用で上顎の骨自体を横の方向へ拡大することができます。
写真4の装置(クワッドヘリックス)の場合は、ワイヤーの弾力にて歯列自体を横の方向に拡大することが可能になります。
どちらの装置も歯に直接くっつけますので、患者様自身が取り外しできません。
この場合も(A)と同様、凸凹の歯並びを真っ直ぐにしたり、出ていた前歯を後ろへ下げたりするスペースが確保されます。
写真5の装置(拡大床装置)も歯列を横方向へ拡大する装置の一種ですが、取り外し可能なタイプです。
真ん中に埋められた拡大ネジの作用により、歯列が横へ拡大されます。
写真3や4の装置と比べると効果が若干弱いため、治療期間は延びることが多いです。
写真6の装置は主に下顎に用いる取り外し式の装置です。
写真1~5の装置は、歯に直接力を加えることにより歯列を拡大しましたが、この装置の作用としましては、間接的に歯列を拡大します。
歯列が縮まるように加わっていたほっぺたの筋肉の力を排除することにより、奥歯がほっぺた側に起きあがり、歯列が横方向に拡大します。
以上のように、矯正装置には、「固定式」タイプ・「取り外し式」タイプ・「家でだけ使う」タイプ、種々ございますが、患者様の年令、患者様のお口の中の状態に配慮し、相談の上で装置を決めたいと思います。
患者様ご本人の意思に反する装置は使用いたしません。
(C)歯を削ってスペースを作る治療
スペースを作るために歯列を拡大する方法は主に成長期の患者様に対して行いますが、成長期を過ぎても可能な方法があります。それは歯を削ってスペースを作る方法です。また、成長期の患者様の場合にも、この歯を削る処置は歯列の拡大を補う方法として有効です。
歯の表面はエナメル質という人体で最も硬い組織で覆われています(写真7)。エナメル質には神経が通っていませんので、この部分の最大0.5mmまでなら削っても、しみて痛いといったことが起こりません。また、歯を削ったからといって虫歯になったりしないと、実験的に証明されています。そこで、写真8のように歯と歯が隣接する部分を削ってスペースを作ります。
痛くない・虫歯にならないといっても、安易に削ることはございません。この処置が必要な場合には、患者様のご了承のもとに行います。
(A)と(B)の拡大装置による治療は、エッジワイズ治療より前に行うことが多いのですが、(C)の処置は、エッジワイズ治療中、同時に行うことが多いです。
- 後方にも横にも歯列を拡大する余地がほとんどない
- 骨格的な不正が強い
- 口唇部の突出感が強い
- 装置の使用に非協力的である
- 虫歯などの原因により、保存できない永久歯がある
- 先天性欠如歯や過剰歯があり、歯の数に異常が見られる
歯を抜かない(非抜歯)矯正治療について述べてきましたが、それらの矯正治療が成功するためには、一般的には骨格的な不正があまり無い場合に有効になります。
しかし、骨格的な不正があっても、成長期(6歳~12歳くらい)の患者様の場合には、顎の成長発育をコントロールすることを先立って行っておけば、多くのケースで非抜歯治療が可能になります。
エッジワイズ治療(後期治療)に先立って行う顎の成長発育をコントロールする治療を、当院では前期治療と呼んでいます。
骨格的な不正咬合には、上下顎の前後的関係から(A)上顎前突・(B)下顎前突、上下的関係から(C)開咬・(D)過蓋咬合、左右的関係から(E)交叉咬合の5タイプ(写真9および10)があります(組み合わさったケースもあります)。それぞれの前期治療について、詳しく説明いたします。
(A)上顎前突
上上顎前突とは、いわゆる『出っ歯』のことですが、写真11のように上顎骨が下顎骨より前方に突出しています。その特徴を挙げてみます。
![]() 写真11 |
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前に出ている(過成長の)上顎骨を後ろに引っぱるのか、後ろに引っ込んでいる(劣成長の)下顎骨を前に出すのかで、使用する装置が異なります。
![]() 写真12 |
![]() 写真13 |
上顎骨の過成長がある場合には、上顎骨に後ろ向きの力を加えて、上顎骨の成長を抑制します。
また、奥歯を後ろに移動させることも可能です。主に就寝時に使用して頂きます。
写真12は首から上顎骨を後ろに引っ張っていますが、写真12のように後頭部から引くタイプのヘッドギアーもあります。
下顎骨の後退や劣成長の場合には、下顎骨が前方に成長するように、ファンクショナルアプライアンスを使用します。ヘッドギアーを併用することもあります。
この装置も、取り外しが可能な装置で、主に就寝時に使用して頂きます。
(B)下顎前突
![]() 写真14 |
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身長が伸びると下顎骨も大きくなります。そのため、上下の前歯の関係がいったん正常になっても、成長途中で再発する可能性がありますので、成長があるうちは経過観察する必要があります(小学校低学年から、晩期性の成長のおさまりがつく高校生ぐらいまで経過観察することもあります)。
骨格的な要因が弱い場合には、リンガルアーチという装置を用いて上顎前歯を前に出し、正常な上下前歯の関係を作るようにします。骨格的な要因が強い場合には、前に出ている(過成長の)下顎骨を後ろに引っ張るか、または、後ろに引っ込んでいる(劣成長の)上顎骨を前に出すような治療も併せて行います。
歯のみを動かす装置です。弾線により歯の後ろから力を加え、上顎前歯を前に動かします。骨格的な不正が軽い場合には、この装置のみで正常な上下前歯の関係が得られます。
下顎骨の過成長がある場合には、下顎骨をエラスティックというゴムにより後ろ向きに引っ張って、下顎骨の成長を抑制します。主に就寝時に使用して頂きます。口の中にリンガルアーチを併用する場合も多くあります。
上顎骨の劣成長の場合には、上顎骨が前方に成長するように、フェイスマスクからエラスティックを用いて上顎を前方に牽引します。口の中にはリンガルアーチや急速拡大装置(写真3)などの固定式装置が装着されており、その装置にフェイスマスクからのエラスティックがかかる仕組みになっています。
チンキャップと併用するタイプのフェイスマスクもあります。この装置も、主に就寝時に使用して頂きます。
(C)開咬
奥歯で咬んだときに前歯が全く咬み合わないような状態を開咬といいます(写真18)。
開咬のみになっている場合もありますが、上顎前突や下顎前突(特に上顎前突)と併発している場合も多くあります。その特徴を挙げてみます。
![]() 写真18 |
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口呼吸や舌突出癖が原因で開咬が起こると、これらの癖がさらにひどくなります。癖がひどくなると開咬も悪化するという悪循環に陥ってしまいます。この悪循環を絶たない限り、開咬は治りません。いったん治ったように見えても、癖が原因で開咬が再発することも多々あります。人間は一日に約2,000回もつばを飲み込みますが、その度に、無意識に舌を突き出して上下前歯の間にはさむのですから、この癖を止めるのがいかに難しいかお分かり頂けると思います。
開咬以外に大きな骨格的な不正が無い場合には、まず原因となっている舌突出癖を治すために、タングクリブ(写真19)を入れます。この装置により、舌が上下前歯の間に出てこなくなり、歯に加わっていた異常な舌の圧力を遮断することができます。開咬の程度が軽い場合には、癖を治すだけで開咬も治ってしまうことがあります。
また、鼻や喉の疾患が原因と考えられる場合は、耳鼻咽喉科での治療をあわせて受けて頂くようお勧めすることがあります。
開咬は、上顎前突や下顎前突と併発している場合が多く、その場合は、他の骨格的な不正を先に(又は同時に)治します。例えば上顎前突を伴った開咬の場合、不正の状態として、前歯が低く、奥歯がのび出ている(過萌出)ので、治療としては、のび出た奥歯を骨の中に引っ込めるように矯正力をかけます。写真20の装置はトランスパラタルアーチといいますが、舌の圧力がこの装置にかかると、上顎の奥歯が骨の中に入るような力がかかります。また、ハイプルヘッドギアー(写真21)を併用し、奥歯を骨の中に引っ込める力を増やしながら、上顎骨の成長も抑制します。
(D)過蓋咬合
奥歯で咬んだときに、正常な咬合状態では、上顎前歯が下顎前歯の1/4~1/3程度を覆っているのですが、それ以上に深く覆っている状態を過蓋咬合といいます(写真22)。過蓋咬合のみになっている場合もありますが、上顎前突と併発している場合がとても多いです。その特徴を挙げてみます。
![]() 写真22 |
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不正の状態として、前歯がのび出ていて奥歯が低いため、治療としては、先ず、低い奥歯がのび出るようにします。のび出た前歯を引っ込めるのは主にエッジワイズ治療(後期治療)で行います。
上顎に装着する装置で取り外しが可能です。バイトプレートを装着すると、装置の平面と下顎前歯が接触しますが、上下の奥歯は離れて咬み合わない状態になります。歯というものは、咬んでいない場合、咬み合う歯を求めてのび出てくる性質を持っていますので、このことを利用して治療します。装置は、食事と歯磨き時を除いて、できるだけ長い時間(15~20時間程度)の使用が必要です。
この装置も上顎に装着し、取り外しが可能です。バイトプレートが下顎前歯の接触する部分が平面であるのに対し、ジャンピングプレートはこの部分が斜面になっています。
バイトプレートとほぼ同じ効果が期待できるだけでなく、下顎が後退・劣成長している場合(上顎前突)にも有効です。この装置も、食事と歯磨き時を除いて、できるだけ長い時間(15~20時間程度)の使用が必要です。
過過蓋咬合を伴う上顎前突の場合に有効です。低い奥歯がのび出るように調節することが可能です。この装置も、取り外しが可能な装置で、主に就寝時に使用して頂きます。
(写真12)は首から上顎骨を後ろに引っ張っていますが、上顎の奥歯が後ろに動くだけでなく、のび出るように下へ引っ張る力が同時にかかります。主に就寝時に使用して頂きます。
(E)交叉咬合
上下顎の奥歯の正常な左右的関係は、上顎の奥歯が下顎の奥歯より外側にあるのですが、その関係が逆の場合すなわち上顎の奥歯が下顎の奥歯に対して内側に咬合するものを交叉咬合といいます。交叉咬合には両側性と片側性があり,下顎が著しく前方位をとると(下顎前突の場合)左右の両側に(写真24-E-Ⅰ),下顎が一方の側にずれると片側に(写真24-E-Ⅱ)交叉咬合が生じます。
片側性の交叉咬合の場合、ほとんどのケースで上下顎前歯の正中が左右にズレてしまいます。また、片側性交叉咬合がひどくなると、正面から見た場合に顎が左右片側に曲がって見えるようになりますし、顎関節にもズレが生じてしまいます。
下顎に比べて上顎の横幅が狭い場合には、上顎の横方向への拡大を行います。拡大装置には、急速拡大装置(写真3)、クワッドヘリックス(写真4)、拡大床装置(写真5)があります。
それぞれの拡大装置についてはこちらに詳しい説明があります。
片側性交叉咬合の場合、多くのケースで上顎の拡大により上下顎前歯の正中のズレは少なくなります。さらに、このズレの治療はエッジワイズ治療(後期治療)でも行います。
☆骨格的な不正を改善し、かつ、非抜歯による治療を成功させるためには・・・・・
実際の症例
実際に歯を抜かない(非抜歯)矯正治療で歯並びが綺麗になった症例をご覧頂きます。


上下顎前歯が不揃いでしたが、非抜歯矯正治療により綺麗な歯並びになりました。


前に出ていた上顎前歯が後ろに下がり、口元の突出感も解消しました。


上下顎前歯の関係が反対になっていましたが、正常な関係になりました。口元の印象も良くなりました。


治療前は奥歯で咬んだときに前歯が全く咬み合っていませんでしたが、治療後は、しっかりと上下前歯が咬み合っています。


治療前は上顎前歯が下顎前歯を完全に覆い隠していましたが、治療後は下顎前歯が半分以上見えるようになりました。また、併発していた上顎前突も治っています。


下顎が左側にズレて片側性の交叉咬合になっていましたが、治療後は下顎のズレが解消し、上下顎前歯の正中線も一致しています。





